2008年 11月 21日 17:20 共同通信
「酸素カプセル」禁止は勇み足?
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夏の高校野球で優勝した当時早実の斎藤佑樹投手(早大)が疲労回復に使用したことなどで知られる「高圧酸素カプセル」について、このほど世界反ドーピング機関(WADA)の検討委員会が「問題なし」との見解を出した。
日本の同機構は6月に「ドーピング違反の恐れがある」として、スポーツ団体に使用自粛を通達。日本高野連なども自粛してきたが、日本スポーツ界の対応が勇み足に終わる可能性も出てきた。
11月21日2時31分配信 毎日新聞
<高気圧カプセル>JADA見解に従う JOCなど方針
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世界反ドーピング機関(WADA)が「『高気圧カプセル』はドーピングにあたらない」とする見解を示したことで、違反を懸念してカプセルの使用を控えていたスポーツ界では今後、対応が変わる可能性がある。
6月に「現時点では使用を控えるべきだ」との見解を出した日本アンチドーピング機構(JADA)では、回答文の内容を踏まえて「WADAが正式に禁止しないという判断をするなら、見解を見直すこともあり得る」との姿勢を示した。WADAが今週末に開く理事会などで、この件について議論する可能性もあるという。
日本オリンピック委員会(JOC)や日本高校野球連盟では、JADAの見解に従う方針だ。JOCは北京五輪で、カプセルの使用や持ち込みをしない決定をした。
柳谷直哉・強化部副部長は「今後はJADAの判断に従って対応する。JOCで独自に決められることではない」と話す。
高校野球界では、06年夏の全国選手権で優勝した早稲田実(東京)の斎藤佑樹投手(現早大)が使用したことをきっかけに広がり、今春の選抜大会ではベスト4の学校すべてが使用。
しかし、日本高野連では7月に加盟校へ「使用を控えるべきだ」との通知を出していた。田名部和裕参事は「現時点で、見解を変えることはない」と語ったが、JADAが判断を変えれば従う可能性が高いと見られる。
カプセルの製造、販売を行う業界団体の若汐豊・日本国際健康気圧協会専務理事は「加盟会社から問い合わせが相次いでいた。
今後は安全性をどう広めていくか、関係者と協議していきたい」と述べた。早稲田実にカプセルを提供したオフィス・ナカツの中津川栄作社長は「購入やレンタルのキャンセルが続いていた。やっと健全な形でアスリートに使ってもらえる」と話した。
◇ドーピング線引き複雑
「高気圧カプセル」の問題は、いかにドーピングの線引きが難しいかを示している。
酸素濃度を高めた医療用カプセル(HBO)と、酸素濃度を変えない健康増進用カプセル(HBA)。ともに気圧を高めたカプセルに入ることは人為的な行為だ。WADAは人為的に酸素運搬などを促進する手段を禁止しているが、健康増進用カプセルは競技力を向上させるものではない、と判断した。
この他、低酸素室や高地でのトレーニングも酸素に関係したスポーツ科学の技術ではある。また、健康増進用のカプセルといいながら、酸素濃度を高めている業者もある。何を「人為的な競技力向上手段」といい、血液検査で酸素運搬能力をどこまで計測できるのか、その区分けはますます複雑になる。
今回も国内機関はすべてWADAの見解に従ってきた。それだけ科学的証明が困難なのだろう。
HBAと呼ばれる高気圧カプセルは、WADAから「お墨付き」をもらった形だ。ただ、業界団体の日本国際健康気圧協会の研究会では「HBAは健常者には問題がない。しかし、心臓疾患の患者には気圧の関係で副作用が出ることがある」との研究結果も報告された。今後は利用者の拡大が見込まれるだけに、適切な安全管理が不可欠だ。【滝口隆司】
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